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WisHメディア「ダイバーシティ Café」 - 対談
「D&I」×「組織開発」
鴻池亜矢
Office 6/8 代表
日本企業でD&Iを進めるには?
~100年企業を生き抜いていく力~
2020.02.18
Guest Profile
鴻池亜矢 Office 6/8 代表

MBTI協会 認定ユーザー、米国PMI Project Management Professional
米国CCE,Inc認定、GCDFキャリアカウンセラー
日本産業カウンセリング協会 産業カウンセラー、
生涯学習開発財団 認定コーチ
 
■略歴:
東日本電信電話株式会社に入社し法人営業を担当後、
「フレッツ・サービス」の開発を担当。
その後人材紹介会社でのキャリアコンサルタント・業務企画、
株式会社富士ゼロックス総合教育研究所・
株式会社ToBeingsのコンサルタント職を経て独立。
現在はファシリテーター、コーチ、カウンセラーとして
企業の人材開発・組織開発支援を行う。
富士ゼロックス総合教育研究所在籍中に、
南山大学大学院教育ファシリテーション専攻を修了。
 
これまでに2000名以上のマネジャーに研修を提供。
また、研修のみならず、現場実践を主体とした
プロジェクト型施策のデザインを得意とし、
電機メーカー、化粧品会社、通信キャリア、地方銀行、証券会社、など
多種多様な業種に対して、3ヵ月〜1年間のプロジェクト型デザインでの
施策を、延べ50件ほど実施してきている。
事業会社で得た実務者としての視点と、大学院で得た研究者としての視点、
そしてコンサルティング会社で得た専門家の視点を総合し、
参加者の認知的理解だけではなく、
行動変容にこだわったファシリテーションを実施。
近年は年6〜7回ほど渡英し組織開発を学び、その技術を元に国内・海外にて、他文化理解とコンフリクト解消を軸とした、
ダイバーシティ&インクルージョン施策や組織開発を行っている。

■日本の土壌がD&Iを阻む?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前島:D&Iの取り組みがうまく進められていない企業が多いのか、弊社も相談を受ける機会が増えてきています。

鴻池:政府が女性活躍推進を打ち出しましたよね。
本当に必要なのは女性活躍推進なの?と疑問に思うことがあります。
さかのぼってみると、黒人の公民権運動がダイバーシティの始まりと言われています。
ダイバーシティそのものが日本から発祥していない考え方、日本にはそもそもなかった考え方ですから、
そのまま根付かせるということ自体が難しいことだと思います。

前島:そうなんですね。
ダイバーシティの考え方が日本に入ってきたこと自体は悪いことではないと思います。
しかし、この日本の土壌のままで、新しいというだけで飛びついてしまったため、
ダイバーシティの取り組みが行き詰まっているのではないかと感じています。

鴻池:もう少し、日本人は自分たちの特性を知った方がよいと感じています。
というのは、イギリスに行った際に、多くの日本人は外国人を毛嫌いしているように感じると言われたことがあります。
そのイメージを払拭するには、日本の歴史から話す必要があるとその時に思いました。
「日本人は外国人を嫌っているわけではなく、侵略を直接受けた経験がほとんどないため、
異なる文化への怖さを感じる傾向がある。加えて英語が苦手だから逃げる反応をしてしまう。
それが誤解を呼んでいる」と説明をしました。
多くの日本人は、自分と異なるものに対して慣れていないのですよね。

 

前島:だから企業も、単一性の高い、特定のプロフィール(男性・大卒)の人だけで、長い間成り立たせてきたわけですね。
見た目も考え方も違う=自分と異なる人たちに対して、適応する土壌や風土が、現代でも「ない」ということになりますが。

鴻池:これまでのようにある特定のプロフィールの人々によって組織が運営されてきたのは、
教育の影響も大きいように感じます。
皆と違うのはおかしいという教育の中では、「違います」と意見が言えなくなってしまう。
集団圧力があるわけです。だから、組織運営の方法にも異議が出ないのかと。

 

前島:同調圧力は、日本人は特に強いように感じますが、
外国人にも同調圧力はありますよね?

鴻池:あります。
でも、日本とは少し違っており、民族の単位やヒエラルキー、数による同調圧力が多いかなと感じます。
日本の場合は、妄想(見えないプレッシャー)というか、
見張られていると感じることで圧力を感じることが多いと思います。
この背景には文化的な異なりがあると思います。
ミシガン大学のリチャード・ニスベット教授の研究「東洋人と西洋人は世界の見方が異なる」によると、
西洋は個人主義、東洋は集団主義という違いは、文化的背景によるものとされています。
西洋は、古代ギリシャ時代から個人で農園を所有し、利益は個人のものとする自営農家。
それに対して、東洋(古代中国)では、灌漑農業という方式で、
互いに助け合って水を分け合い、誰も不正を働かないよう気を配る文化となった。
このような違いは少なくとも2000年前から存在していた、とニスベット教授は指摘しています。
他にも、学生を対象にした実験でも面白い結果が出たものがあります。
「1枚の写真(魚が写っている)を見てください」と伝えると、
西洋文化圏の人と東洋文化圏の人とでは、見ている視点がまったく違うというのです。
西洋文化圏の人は、魚にフォーカスした感想が多く、モノにより多くの注意を払っている。
東洋文化圏の人は、背景の観察と全体をとらえた感想が多い。
西洋は個に注目し、東洋は周りから見ていく。
同調圧力の質の異なりもこういった視点の違いからきているのかなと感じます。

前島:確かに日本人は、“周りが、他の人がどう思うか”にすごく敏感ですよね。

鴻池:そういう意味では、他者への感覚に優れているという強みでもあると思います。

前島:それが良い方向へ働くと、チームワークや和の精神で力を発揮できるということですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■日本企業のD&I 現状と打ち手

鴻池:組織開発など、長期視点での施策が、企業で長続きしないのは問題だなと感じています。
1つの要因として、異動により担当者がすぐ変わることもありますね。
日本企業はジェネラリスト志向のため、担当者が変わると施策も変わる。
ジェネラリスト志向でやっていく前提なのであれば、施策をどう進めるのが効果的なのかを考えていく必要があると思います。

 

前島:D&Iのような施策は、担当者が変わっても施策の軸は変えずに何らかの形で続けていくべきではないでしょうか?

鴻池:そうするには、現状では多くの企業においてD&I推進室の人と
他の社員間のD&Iに対する意識のギャップがかなり大きいですね。
D&I推進室の人たちだけが危機感を感じているように観えます。
D&Iに関する社内の認知度が高く、各自に基本的な素養があれば、
誰が異動してきても1からのスタートにはならないはずです。
そうなるためには、階層別の研修などにD&Iの基本的な要素を取り入れるなど、
仕組みを工夫するとよいのではないでしょうか。

 

前島:例えば、新任管理職研修の中にD&Iの要素が組み込まれ、
全管理職のリテラシーを上げていくといったことですよね?

鴻池:そうです。ある程度必須で。
今後、外国人雇用も増えていきますから、少なくとも企業に入ったら、D&Iの素養が身につくように再教育が必要ですね。
このままだと、これからの時代を日本企業が生き抜いていけなくなってしまいます。

前島:そもそも学校教育の中でそういう教育がないことも原因では?

鴻池:はい。日本の教育制度には「みんな同じが良い」という考え方が根底にあります。
そもそも先生たちがD&Iの教育を受けていない。
また、先生たちも「みんな同じ」であるほうが扱いやすいため、
子どもたちに「同じになりなさい」と無言の圧力をかけてしまう。
日本の教育により、20世紀生まれには「みんな同じ」という考えが無意識に組み込まれています。
そんな中、第三次ゆとり世代頃から、学校教育で「あなたらしさ」を推奨するようになり、
子どもたちは、親世代や社会が要請する「みんな同じ」と
学校教育が求める「あなたらしさ」のダブルバインド状態に置かれています。
ミレニアル世代はそんな葛藤状態で育ち、企業に入ってくる。
こんな状況なので、D&Iについては企業の中で再教育していく必要があるわけです。

 

前島:日本ではまだ一部の企業を除いて、人種や宗教などへの配慮が常識となっている…というほどではないと思いますが、
新しく入社してくる人たちへのジェネレーションギャップはあるので、マネジャーは多様性への理解は必要ですよね。

鴻池: 少なくとも、マネジメント層の方は、D&Iの背景を知っていないと、部下の多様性に対応できないでしょう。
今の日本でこれまでの教育の刷り込みが強烈で、単一民族で島国な上、制度も保守的で、
他の人種や国籍が入って来づらい状況ですが、だからと言って、多様性がないわけではない。
欧米ほどわかりやすい多様性ではないが、自分や自分の周囲はすでに多様な状況にあるのに、
それをなかったことにしているところがあるのではないでしょうか。
まずは、自分の中にある多様性に意識を向けていくところから対応が必要ですよね。

 

前島:「ないと思いたい」みたいなのはありませんか?
マネジメントするには、「みんな同じ」の方が楽ですから。

鴻池:そうなんですよ。
機械を扱うように同じ規格にしたほうが楽なので。
異なるものは怖いので、本能的に拒絶反応を起こしやすいのです。
だからみんなと「同じ」になりたい。
でも、「怖い」という本能的な反応をなかったことにはできませんので、
それを認めてどうやって付き合っていくのかを考えていかないと、と思います。

 

前島:本能やDNAレベルでは、D&Iの浸透がうまくいかない要素で満載のように見えますが、
日本の企業に何か打ち手はありそうでしょうか?

鴻池:
企業総体と、個人ベースと、両方あると思います。
個人ベースでいうと、自分自身の中にあるいろいろな文化・多様性を確認していく体験をするとよいと思います。
私も昭和という時代を生き抜いてきたので、「みんな同じ」の考えが刷り込まれていると思いますが、
40歳を過ぎて海外に学びに行ったことで、文化が違う人達と接点が持てました。
一方で、海外に行かなくても自分の中の多様性を確認することはできます。
学校の文化、地域の文化、家族のシステム、会社全体の風土、部署やチームのカルチャーなど、
様々な多様性の中で、人の行動は形成されていきます。
自分は外部からどのような文化や価値観を取り込んできているのか。それを知ることで、
なぜ、自分がその行動をとるのか、他者とどのように異なるのかを説明することができるようになると思います。

 

前島:海外に行くことで「日本」を認識するのと同じように、
会社の中にいても多様性を知る機会があればいいですが、何らかのきっかけがないと、なかなか掘り下げられないのかなと。

鴻池:はい。多様性は、自分と他者は「異なる」という理解がベースになると思います。
他者と「異なる」という認識が生じるのは、自分以外の誰かと接点を持った時しか生じません。
自分と「とても異なる」誰かが、半径5m以内の生活の中に存在していると、学びは大きいと思います。
「とても異なる」存在が近くにいないようであれば、一見自分と同じに見える他者の中に、
際立つ異なりを見つけていく作業は有効だと思います。
同じ大卒・男性・日本人でも1人1人大きく異なりますから。
企業の中でそういう体験をしたいというニーズがあれば、
ワークショップをうまく活用して体感することはできると思います。
まずは、「みんな同じ」と思っている認識を変えて、違うかも、異なるかも、というところを探していく作業が、
日本人の場合は必要でしょう。

 

前島:その場合、自分を見つめる作業も必要でしょうから、何らかの仕掛けをセットし、
考える機会を創りだすほうがよいかもしれません。

鴻池:そうですね。自分で意識を持って他者と出会うために出ていく人(越境予備軍)は、
後押しをしてあげれば動いていくので、こちらが何かしてあげる必要はないと思いますが、
企業にとってサポートする必要があるのは、外に出ていくことへの恐れが強い人でしょう。

 

前島:それが企業ベースの働きかけに繋がっていくのでしょうか?

鴻池:はい。各自のステージに合わせた施策をクローズドで行ったり、
他企業と合同で何か取り組んだりするのも良いと思います。

前島:まさにそれは越境ですよね。

鴻池:他企業合同形式だと越境感は高まりますから。

前島:実際に鴻池さんも他企業合同形式はやられていますよね。

鴻池:はい。「似たような業種・業態でも大きな違いがある」等、
気づいていただいているので、その体験は大きいですね。

 

■D&Iを動かすために

鴻池:このように施策はいろいろ立てられますが、日本企業の場合、目的が明確でないことが多いように感じます。
女性活躍推進も働き方改革もそうですが、国からの要請で受動的に取り組みを始める流れがあるように思えます。
そろそろ、企業自体の欲求からD&Iを考えてみることも必要なのではないでしょうか。

 

前島:企業の内発的動機づけのようなことですね?

鴻池:はい。外発ではなくて、自社の置かれている立場や過去の歴史、経営課題を踏まえて考えていく。
そのようにD&Iを考えていくことがそろそろ必要なのではないかと思います。

 

前島:施策はなんでもそうですが、そもそもなぜ必要なのか、何をするのか、
誰を巻き込んでいくのか、を最初から当事者として考えて取り組みを進めていかないと、
「言われるがままやる」状態に陥ってしまいますよね。

鴻池:加えて、今の日本では、D&I=女性活躍推進みたいになってしまっていますが、
それは、ハードルが高いやり方なのではないかと思います。
アメリカのダイバーシティ施策も最初の頃はそうだったようですが、
マイノリティを支援するだけのやり方だと対立構造を作ってしまうんですよね。
白人か黒人か。女性か男性か、となる。
こういった対立構造を作った上で、弱者に対する底上げ対策を行うと、
そうじゃない属性の人たちの感情的反発を招きやすくなります。
なので、二項対立ではなく、違う視点を提供する必要があるのかなと思うのです。
例えば、ジェンダーをDNA的視点からではなく、
自分の内なるジェンダーカルチャーがどうなっているのかを考えていくというやり方もひとつあります。
男性も女性性を持っていますし、女性も男性性を持っています。
「女性活躍推進」は女性だけに焦点を当てているように見えてしまっているのを、
どうしたら二項対立を薄められるのか考える。

 

前島:対立では進まないわけですよね。確かにその方がよいように思います。

鴻池:そうは言っても、個人の刷り込みを外していくのは非常に難しいですよね。
見方を変えろと言われると人は生き方を否定されるような気がしてしまうものです。
これまでの社会システムの影響から、男性はマネジメント力を求められ、女性はその機会が与えられてこなかった。
その社会システムの影響もあることを知ったうえで、今の言動をちゃんと棚卸する必要があるかなと思います。

 

前島:日本の企業は社会システムに基づいた仕組みで成り立っているところがあるので、
そこに原因があるのであれば、改善し取り除くことを考えることができればよいですよね。

鴻池:日本人は目の前のやり取りやコミュニケーションに着目しがちですが、
社会システムのような、背景にある構造をもっと見ていく必要があると思います。
構造のせいで、特定の人たちが特定の行動をとらざる得ないこともあると思います。
ただ構造に手を入れるだけで100%変化が保証されるのかと言えばそうでもなく。
人間関係やコミュニケーションの変化を促してカバーしていくことも必要だと思います。
施策を立てるときには構造とコミュニケーションの双方を見ていく方が良いのかなと思います。

 

前島:取り掛かりやすいのは、コミュニケーションやダイナミクスだと思いますが、
そこから始めるのはだめじゃないですよね?

鴻池:効果はあると思いますが、ある一定のところで、必ず頭打ちになると思います。
コミュニケーションスタイルへの働きかけで出てきた声を
どう構造に組入れていくのかが大切となってくるのではないでしょうか。
その点で、取り組みを行う上で、人事やダイバーシティ推進室の方々が力をつけていく必要がありますね。
自分たちはどういう力を求められているかを考えて頂くといいのではないかと思います。
そして私達外部のプラクティショナーは、クライアントが1社1社異なる特質を持っていることを肝に銘じ、
そこをどれだけクライアントと一緒に紐解いていけるのかが大切となってくるのかなと思います。
日本は100年企業がいっぱいあって凄いと言われているので、
その企業に生き抜いていって欲しいと思います。
ただ、今までのやり方では上手くいかないので、良いところは残しつつ、
新しいモノを入れていくことが大事だと思います。その一つとしてD&Iも重要だと私は思っています。

 

前島:本日は、貴重なたくさんのお話をありがとうございました。

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